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「資産運用会社」という言葉は、投資初心者には馴染みがないかもしれません。実は投資信託のほとんどは資産運用会社がポートフォリオを組んで運用しています。
資産運用会社には、国内の運用会社と外資系の運用会社があります。それぞれどのような特徴があり、運用資産はどれくらいあるのかを徹底比較します。
新NISAスタートで重要性が増す資産運用
2024年1月からNISA(少額投資非課税制度)の投資枠が拡充され、資産運用を始めるのに絶好の環境が整いました。
2024年2月22日、日経平均株価がバブル期の1989年12月29日に付けた3万8,915円87銭の史上最高値を約34年ぶりに更新しました。株式市場が上昇基調になっていることも追い風です。
さらに、ウクライナ戦争に端を発した輸入物価の高騰で日本経済もインフレ下にあり、何もしなければお金の価値が下がってしまう状況です。そのため、資産運用の必要性はさらに高まっています。
資産運用を始める前に、まずはNISA制度にも関係する資産運用会社について知っておく必要があります。
資産運用会社とはどんな会社か
資産運用会社は、投資家から資金を預かって資産運用を代行する会社です。「投資信託の運用元が資産運用会社」と考えればよいでしょう。
資産運用会社は投資信託を組成し、販売会社を通じ投資家に販売しますが、保有する投資家から信託報酬と呼ばれる運用手数料を徴収します。これが、資産運用会社の主な収入源です。
資産運用会社は会社名で判断することができます。下記のように大手金融機関は資産運用会社を持っており、社名にはアセットマネジメントと付いているのでわかりやすいです。
・主な金融機関の社名
野村證券、大和証券、三菱UFJ銀行
・主な資産運用会社の社名
野村アセットマネジメント、大和アセットマネジメント、三菱UFJアセットマネジメント
資産運用会社の役割
投資信託は、「販売会社」「資産運用会社」「受託銀行(信託銀行)」の3機関が役割を分担して運用しています。
資産運用会社の役割は、投資信託のファンドを組成することです。
運用会社によって組成された投資信託は販売会社を通じて売り出され、投資家が資金を拠出して購入します。集められた資金は1つにまとめられて受託銀行が保管します。
そして資産運用会社が運用を指示し、受託銀行が金融市場で投資を行うという流れです。
資産運用会社は購入した投資家向けの運用レポートや、マーケット・経済の見通しなどをホームページで提供しています。
資産運用会社を利用するメリット・デメリット
資産運用会社を利用することのメリット・デメリットは、以下のとおりです。
資産運用会社を利用するメリット
資産運用会社を利用するメリットは、時間や手間をかけずに投資できることです。
仕事や家事に追われ、自分で投資先を選ぶ時間がない人もいるでしょう。投資信託なら自分で銘柄を選ぶ手間がなく、プロに運用を任せられます。
積立投資信託なら、投資するファンド名と毎月の購入金額、口座引き落としの日付などを設定すれば、自動的に買い付けてくれます。
資産運用会社を利用するデメリット
資産運用会社を利用するデメリットは、運用コストがかかることです。
自分で個別株を買う場合、現在はほとんどの証券会社で口座管理料がかからず、売買手数料も条件(NISA口座限定等)付きで無料になる会社があります。
しかし投資信託は運用時には「信託報酬」、換金時には「信託財産留保額」などのコストがかかります。それらのコストがもったいないと感じる人もいるでしょう。
資産運用会社の特徴
ここからは、資産運用会社の特徴や運用会社の種類を見ていきます。日本と海外の資産運用会社には、以下のような特徴があります。
日本の資産運用会社の特徴
日本の資産運用会社の特徴は、企業グループ系と独立系に分かれていることです。
多くの金融機関は資産運用会社を持っていますが、その狙いはグループ間のシナジー効果を高めることです。
例えば、証券会社は投資信託の販売を行っていますが、資産運用を行う子会社を持っていれば、グループ会社が運用する投資信託を顧客にすすめることができます。
独立系は金融業務がなく、資産運用に特化している会社です。
独立系でも、ひふみ投信を運用するレオス・キャピタルワークスのように1兆円以上の資金を集めている会社もあり、大手と比べても遜色ない実績(ランキング18位)を上げています。
海外の資産運用会社の特徴
海外の資産運用会社の特徴は、資産運用業務に特化した会社が多いことです。
ブラックロックやバンガードグループなどが、代表的な特化型資産運用会社です。また、ステート・ストリート・グローバルのように信託銀行の傘下の資産運用会社もあります。
資産規模では米国の資産運用会社がランキング上位10社のうち8社を占めており、圧倒的強さを誇っています。
海外の資産運用会社は世界規模で展開しているため、資産規模も日本の運用会社とは桁違いです。
主な資産運用会社
次に、日本と外資系の主な資産運用会社を紹介します。最近は外資系の資産運用会社が組成したETF(上場投資信託)も増えているので、外資系にも注目しておく必要があります。
日本の資産運用会社
日本の資産運用会社を大きく分けると「証券会社系」「銀行系」「保険会社系」の3つです。大手金融機関のほとんどは、資産運用会社を持っているといってよいでしょう。
・証券会社系
野村・大和・日興の大手証券会社御三家の資産運用会社は、資産規模でも上位3社を独占しています。
特に「NEXT FUNDSシリーズ」で売買シェアが大きい野村アセットマネジメントは、2位の大和アセットマネジメントの2倍以上の運用資産規模を誇ります。
・銀行系
メガバンク3行は、いずれも資産運用会社を持っています。
三菱UFJが「三菱UFJアセットマネジメント」、三井住友が「三井住友DSアセットマネジメント」「三井住友トラスト・アセットマネジメント」、みずほが「アセットマネジメントOne」です。
メガバンク系4社が純資産総額ランキングで4~7位を占めており、資産運用でも大きな成果を上げています。
・保険会社系
大手保険会社も資産運用会社を持っています。
日本生命の「ニッセイアセットマネジメント」、東京海上日動の「東京海上アセットマネジメント」、明治安田の「明治安田アセットマネジメント」などです。ニッセイアセットマネジメントは純資産総額ランキング11位です。
・独立系
独立系には「さわかみ投信」、「レオス・キャピタルワークス(ひふみ投信)」などがあります。
独立系でも日経平均やTOPIX(東証株価指数)の上昇を上回るパフォーマンスを上げている会社もあるので、資産規模だけで選ぶのは早計です。
外資系の資産運用会社
外資系の資産運用会社はあまり馴染みがないかもしれませんが、ブラックロック・ジャパンは「iシェアーズ」のブランド名でETFを運用していることから、知名度が上がっています。
親会社のブラックロックは世界最大の資産運用会社でもあり、今後日本でも存在感を増す可能性があります。
その他の外資系資産運用会社には以下があります。
• ピクテ・ジャパン
• ゴールドマンサックス・アセット・マネジメント
• キャピタル・インターナショナル
• ティー・ロウ・プライス・ジャパン
• インベスコ・アセット・マネジメント
• J.P.モルガン・アセット・マネジメント
• アムンディ・ジャパン
いずれも日本での運用資産残高は5,000億円を超えています。
国内と世界の資産運用会社ランキング
資産運用会社は、どのくらいの資産を運用しているのでしょうか。国内と世界の資産運用会社ランキングを見てみましょう。
国内の資産運用会社ランキング
投資信託協会の調べによる「投資信託の運用会社別純資産総額ランキング(2023年3月)」の上位10社は、下表のとおりです。
会社名 | 運用資産 | |
---|---|---|
1 | 野村アセットマネジメント | 44兆5,633億9,000万円 |
2 | 大和アセットマネジメント | 21兆5,907億5,800万円 |
3 | 日興アセットマネジメント | 21兆709億9,300万円 |
4 | 三菱UFJアセットマネジメント | 18兆1,102億1,400万円 |
5 | アセットマネジメントOne | 11兆3,684億5,100万円 |
6 | 三井住友DSアセットマネジメント | 6兆6,055億円 |
7 | 三井住友トラスト・アセットマネジメント | 5兆9,141億3,600万円 |
8 | フィデリティ投信(外資系) | 3兆5,970億3,300万円 |
9 | ブラックロック・ジャパン(外資系) | 3兆4,535億3,300万円 |
10 | アライアンス・バーンスタイン(外資系) | 3兆2,112億5,400万円 |
ランキングの上位7社を国内勢の資産運用会社が占めています。
大手証券会社とメガバンク系列の資産運用会社ばかりですが、グループ間のシナジー効果が発揮されている結果といえそうです。
一方、8~10位には外資系資産運用会社がランクインしており、今後知名度が上がれば外資系のシェアが高まる可能性があります。
海外の資産運用会社ランキング
シンキング・アヘッド・インスティテュートの調べによる「2022年度世界資産運用規模上位500社ランキング」の上位10社は、下表のとおりです。
会社名 | 所属国 | 運用資産 | |
---|---|---|---|
1 | ブラックロック | 米国 | 10兆101億4,300万ドル |
2 | バンガードグループ | 米国 | 8兆4,663億7,200万ドル |
3 | フィデリティ・インベストメンツ | 米国 | 4兆2,338億2,500万ドル |
4 | ステート・ストリート・グローバル | 米国 | 4兆1,381億7,200万ドル |
5 | J.P.モルガン・チェース | 米国 | 3兆1,130億ドル |
6 | アリアンツグループ | ドイツ | 2兆9,544億3,200万ドル |
7 | キャピタルグループ | 米国 | 2兆7,151億7,800万ドル |
8 | ゴールドマン・サックスグループ | 米国 | 2兆4,700億ドル |
9 | BNYメロン | 米国 | 2兆4,343億3,000万ドル |
10 | アムンディ | フランス | 2兆3,324億5,400万ドル |
1位は、世界的な資産運用会社であるブラックロックです。運用資産は、1ドル150円換算で1,500兆円を超えます。
10位のアムンディでも300兆円を超えており、国内1位の野村アセットマネジメントの44兆円をはるかに上回っています。
日本法人を持っている会社も多く、今後はこれらの巨大機関投資家が日本株を買い増していくことが期待されます。
資産運用会社が運用する主な商品3つ
資産運用会社が運用している商品では、以下の3シリーズがよく知られています。国内資産運用会社と外資系資産運用会社が運用する代表的な商品を紹介します。
1.NEXT FUNDSシリーズ
野村アセットマネジメントが運用するETFです。各種株価指数と連動するインデックス型ETFがラインアップされています。
特に「1570 NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信」と「1357 NEXT FUNDS日経ダブルインバース」の2銘柄は出来高が多く、相場を表す指標銘柄になっています。
1570は日経平均と同じように動くので、日経平均が上がればETFの価格も上がります。
一方で1357は日経平均と逆の動きをするように設計されているため、日経平均が下がるとETFが上昇し、日経平均が上がるとETFは下落します。
2.iシェアーズシリーズ
外資系のブラックロック・ジャパンが運用するETFです。世界最大の資産運用会社だけに、米国株を組み入れた商品に定評があります。
米国の配当利回りが高い株式で構成する「2013 iシェアーズ米国高配当株ETF」や、毎年連続して増配を続ける株式で構成する「2014 iシェアーズ米国連続増配株ETF」などが挙げられます。
配当に着目しているため、安定した成長が期待できます。米国株を中心に投資したい人に向く商品です。
3.eMAXISシリーズ
三菱UFJアセットマネジメントが運用する投資信託です。
AERA dot.の調べによる「新NISA 1ヵ月で買われた投資信託ベスト30」で「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」が1位、「eMAXIS Slim米国株式S&P500」が2位となり、2つの商品合計で5,000億円の資金を集めました。これらの人気の高さがうかがえます。
2024年3月時点で日米を中心に世界的な株高が続いていることから、全世界の株式に投資するファンドが最も多く買われたことは注目すべき動きといえます。
ETFとオープン投信の違い
投資信託の基準価額は新聞の株式欄にも掲載されますが、「ETF」と「オープン投信」に分かれています。両者の違いは上場の有無です。
ETFは上場されているため株式と同じように売買ができ、価額もリアルタイムで変化します。個別株と同じような感覚で売買できるのが魅力です。
オープン投信は「追加型投資信託」とも呼ばれ、募集された当初の信託財産の上にいつでも資金の追加設定を行って運用する商品です。
非上場であるため、その日株式市場の取引が終了した後に計算して基準価額が決定されます。1日1回しか値段が付かないため、機動的な売買ができないことが難点です。
資産運用会社を活用して投資成果の向上を目指そう
資産運用会社を活用することは、投資信託を購入することにほかなりません。市場に精通しているファンドマネージャーが調査・分析を重ねた銘柄で組成した投資信託は、大きく成長する可能性を秘めています。
2024年1月以降、新NISA口座でも多くの人が投資信託に投資したというニュースがNHKで報道されましたが、その多くは外国株を組み入れた商品だといいます。やはり、米国株への成長期待が大きいようです。
日本株もデフレ脱却による経済成長への期待から、今後投資信託で買われる可能性は高いでしょう。
ここまで日本と海外の資産運用会社を比較してきました。大切なのは自分が投資したい内容の商品かどうかです。
成長が期待できる商品であれば、運用会社が国内か外資系かはそれほど大きな問題ではないでしょう。
世界的株高の流れを上手く活かし、運用成果の向上を目指してほしいものです。
※本記事は2024年3月4日現在の情報をもとに作成しています。記事中で紹介したETF・投資信託商品は一例であり、当該銘柄への投資を推奨するものではありません。