成長投資枠とは、NISAの2つの投資枠のうち、上場株式や投資信託などに年間240万円まで投資できる枠です。つみたて投資枠より対象商品が広く、積立でも一括でも購入できます。ただし対象外の商品もあり、非課税保有限度額のうち成長投資枠で使えるのは1,200万円までという内数の制限があります。
つみたて投資枠で毎月の積立を始めたあと、成長投資枠をどう使うべきか迷う方は少なくありません。枠が大きいぶん選べる商品も多く、判断の材料が増えるためです。本記事では、成長投資枠の基本、つみたて投資枠との違い、対象外となる商品、代表的な使い方4パターン、注意点まで紹介します。
- 成長投資枠の年間投資枠は240万円であり、つみたて投資枠と併用すると年間360万円になる。
- 非課税保有限度額は生涯1,800万円で、うち成長投資枠で使えるのは1,200万円までである。
- 整理・監理銘柄、信託期間20年未満、毎月分配型、デリバティブを用いた一定の投資信託は対象外である。
- NISA口座の損益は他の口座と損益通算できず、損失を翌年以降に繰り越すこともできない。
- 非課税保有限度額は簿価で管理されるため、値上がりしても枠は減らない。
目次
成長投資枠とは何か つみたて投資枠との違い
成長投資枠は、上場株式や投資信託などに年間240万円まで投資できる枠です。
2つの枠を並べて確認する
NISAには、つみたて投資枠と成長投資枠の2つがあり、同じ年に併用できます。
| 項目 | つみたて投資枠 | 成長投資枠 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 年間投資枠 | 120万円 | 240万円 | 併用で年間360万円 |
| 非課税保有限度額 | 1,800万円(総枠) | 1,200万円(内数) | 簿価で管理 |
| 非課税保有期間 | 無期限 | 無期限 | 制度も恒久化 |
| 投資対象商品 | 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託 | 上場株式・投資信託等 | 成長投資枠にも除外商品がある |
| 対象年齢 | 18歳以上 | 18歳以上 | その年の1月1日時点 |
非課税になるのは運用益
そもそもNISAで非課税になるのは何かを、あらためて確認します。
通常、株式や投資信託を売却して得た利益や、受け取った配当・分配金には税金がかかります。NISA口座で投資した金融商品から得られる利益は、これが非課税になります(出典:金融庁「NISAを利用する皆さまへ」、2026年9月時点)。元本が保証されるわけではなく、値下がりして損失が出る可能性は課税口座と変わりません。
購入方法にも違いがある
つみたて投資枠が積立に限られるのに対し、成長投資枠は積立でも一括でも購入できます。ボーナスなどまとまった資金を投じたい場合に使えるのは、こちらの枠です。
もっとも、成長投資枠でつみたて投資枠の対象商品を買う場合、金融機関によっては積立でのみ取り扱うことがあります。取引画面の設定を確認してください。
成長投資枠で買えない商品もある
対象が広いとはいえ、長期の資産形成に適さない商品は除外されています。
除外される4つの類型
金融庁は、成長投資枠の対象から次の商品を除外しています。
- 整理銘柄・監理銘柄:上場廃止が決まった銘柄や、その恐れがあるとして指定された銘柄です。
- 信託期間20年未満の投資信託等:長期保有を前提とする制度の趣旨から外れるためです。
- 毎月分配型の投資信託等:分配のたびに運用に回る資産が減るため、複利の効果が働きにくくなります。
- デリバティブ取引を用いた一定の投資信託等:レバレッジをかけた商品など、値動きが大きくなるものが該当します。
出典:金融庁「NISAを知る」(2026年9月時点)
毎月分配型はつみたて投資枠でも買えない
ここで押さえておきたいのが、毎月分配型の扱いです。
毎月分配型の投資信託は、成長投資枠だけでなく、つみたて投資枠でも対象外です。NISA口座の中で毎月分配型を購入する方法はありません。分配金を定期的に受け取りたい場合は、課税口座での購入を検討することになります。
成長投資枠の使い方4パターン
目的によって、積み増し、配当、個別株、まとまった資金の4通りの使い方があります。
1. つみたて投資枠と同じ投資信託を積み増す
最もシンプルな使い方です。つみたて投資枠の年間120万円では足りない場合に、同じ商品を成長投資枠でも積み立てます。商品を増やさずに投資額だけを増やせるため、管理の手間は変わりません。
なお、同じ商品を2つの枠にまたがって保有することもできます。枠ごとに別の商品を選ばなければならない決まりはありません。
2. 配当や分配金を非課税で受け取る
上場株式やETFを保有し、配当を受け取る使い方です。NISA口座で受け取る配当は非課税になります。
ただし、株式の配当金を非課税で受け取るには、受取方法を証券会社の口座で受け取る方式にしておく必要があります。銀行振込や郵便局での受取を選んでいると、非課税になりません。設定を確認してください。
3. 個別株やREITに投資する
つみたて投資枠では買えない個別株やREITに投資できるのが、成長投資枠の特徴です。ただし、銘柄を選ぶ手間と、値動きの幅が大きくなる点は前提になります。
なお、NISA口座で購入した国内株式であっても、株主優待は課税口座と同じように受けられます。優待を目的に保有する場合も、枠の使い方としては同じです。
4. まとまった資金を投じる
退職金や賞与などを一度に投資する使い方です。年間240万円までであれば、一度に投じることもできます。
とはいえ、一括投資は購入した時点の価格がそのまま結果に影響します。値下がりが不安であれば、数回に分けて購入する方法もあります。
成長投資枠を使うときの注意点
枠の管理と税の扱いには、知らないと損をする決まりがあります。
枠は簿価で管理される
非課税保有限度額は、購入したときの金額で管理されます。
たとえば1,200万円で購入した商品が値上がりして時価1,500万円になっても、使った枠は1,200万円のままです。非課税保有限度額は利用者ごとに国税庁が一括して管理しています(出典:金融庁「NISAを利用する皆さまへ」、2026年9月時点)。
売却しても枠が戻るのは翌年
保有していた商品を売却すると、その簿価分の枠は再利用できます。ただし、復活するのは翌年です。同じ年のうちに売って買い直すことはできません。
なお、年間投資枠を使い切らなかった場合、残った分を翌年に繰り越すこともできません。
損益通算と繰越控除はどちらもできない
NISA口座の税の扱いで、最も誤解が多いのがこの点です。
損益通算とは、同じ年の利益と損失を相殺する仕組みです。繰越控除とは、その年に相殺しきれなかった損失を翌年以降に持ち越す仕組みで、上場株式等の譲渡損失であれば3年間繰り越せます。
NISA口座で生じた損失は、このどちらも使えません。他の口座の利益と相殺することも、翌年以降に繰り越すこともできない扱いです(出典:金融庁「NISAを利用する皆さまへ」、国税庁「No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」、2026年9月時点)。
ここで注意したいのは、非課税は利益が出た場合の話だという点です。損失が出た場合、課税口座であれば税負担を減らす材料になりますが、NISA口座ではその余地がありません。
金融機関の変更は年単位
NISA口座を開設する金融機関は、年単位で変更できます。ただし、その年にすでに買付を行っている場合、その年の変更はできません。
また、変更しても、すでに保有している商品が新しい金融機関へ移るわけではありません。商品は元の金融機関に残ったまま非課税で保有を続けることになります。
課税口座であれば20.315%がかかる
参考までに、課税口座での税率を確認しておきます。運用益にかかる税率は20.315%で、内訳は所得税15%、地方税5%、復興特別所得税0.315%です。この負担がかからないことが、NISAの利点にあたります。
2027年以降の制度変更
令和8年度税制改正の大綱で、NISAの年齢要件の撤廃が示されました。
こどもNISAが創設される予定
2025年12月に閣議決定された大綱では、NISA口座を開設できる年齢の下限を撤廃し、18歳未満を対象とする勘定を設ける方針が示されています(出典:財務省「令和8年度税制改正の大綱」、2026年9月時点)。
ここで押さえておきたいのは、対象となる商品の範囲です。18歳未満が利用できるのは、つみたて投資枠に相当する商品に限られる予定であり、成長投資枠は対象外とされています。子ども名義で個別株を買える制度ではない、という点は確認しておいてください。
つみたて投資枠の対象商品も広がる予定
あわせて、つみたて投資枠の対象商品を拡充する方針も示されています。公社債を主な投資対象とする投資信託を加えることなどが検討されており、選べる商品の幅は広がる見込みです。
枠の上限は変わらない見込み
なお、年間360万円、生涯1,800万円という上限そのものは変更されない見込みです。制度の詳細は今後確定するため、最新の情報は金融庁や財務省のサイトで確認してください。
値動きの幅と向き合えるか
成長投資枠は対象が広いぶん、選んだ商品によって値動きの幅は大きく変わります。
個別株は、その企業の業績や市場環境によって価格が動きます。投資信託であっても、投資先の地域や資産の種類によって性格は異なります。枠の大きさに合わせて投資額を決めるのではなく、値下がりしても生活に影響しない金額かどうかを先に確認してください。
枠を使い切ったあとに考えること
非課税の枠には上限があるため、その先の置き場所も検討の対象になります。
枠を使い切った場合、あるいは年間の投資額が360万円を超える場合は、課税口座での運用が選択肢になります。値動きの性質が異なる資産を組み合わせる考え方もあり、実物資産としての不動産を小口化した商品などが挙げられます。ただし、これらの商品にも元本の保証はなく、分配される金額は運用の状況によって変動します。
反対に、無理に枠を使い切る必要はありません。非課税保有期間は無期限であり、制度自体も恒久化されています。自分の資金計画に合う金額で続けることが前提です。
FAQ:成長投資枠に関するよくある質問
制度の運用面で問い合わせの多い項目をまとめました。
Q.成長投資枠だけを使うこともできますか
できます。ただし、成長投資枠のみを利用する場合の非課税保有限度額は1,200万円が上限です。1,800万円をすべて使うには、つみたて投資枠の利用が必要になります。
Q.年間240万円を超えて購入するとどうなりますか
超えた分は課税口座での取扱いとなり、利益に課税されます。同じ商品であっても、枠を超えた部分は非課税の対象になりません。
Q.NISA口座は複数の金融機関で持てますか
持てません。NISA口座は1人1口座です。非課税保有限度額は国税庁が利用者ごとに一括して管理しています。
Q.2023年までのNISAで買った商品はどうなりますか
2023年末までにつみたてNISAや一般NISAで投資した商品は、2024年以降のNISAとは別枠で管理されます。当時の制度における非課税措置がそのまま適用されます。
Q.NISA口座の商品を課税口座に移せますか
非課税期間の考え方が無期限になったため、期間満了による移管は生じません。売却して課税口座で買い直す場合、売却時点で非課税の扱いは終了します。
まとめ:成長投資枠は「土台をつくってから、目的に合わせて上乗せする」
成長投資枠は、つみたて投資枠より対象が広く、使い方の自由度も高い枠です。その一方で、除外される商品があり、枠の復活は翌年で、損失が出ても税の面で救済はありません。制度の輪郭を押さえたうえで、自分の目的に合う使い方を選んでください。まずは、証券会社の取引画面で、今年のつみたて投資枠と成長投資枠をそれぞれいくら使ったかを確認するところから始めてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の商品の勧誘や投資助言を行うものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。制度の内容は変更される場合があります。
