「老後2000万円問題」や物価の上昇を背景に、資産運用の重要性はかつてないほど高まっています。しかし、いざ投資を始めようと思っても、「投資の種類が多すぎて何を選べばいいかわからない」「リスクが怖くて踏み出せない」と悩んでいませんか?
株式、投資信託、債券、不動産、金……。投資には多くの選択肢があり、それぞれに「リスク」と「リターン」の特徴があります。これらを理解せずに始めてしまうと、思わぬ損失を出してしまう可能性もあります。
この記事では、主要な投資の種類それぞれのメリット・デメリットをわかりやすく解説します。さらに、あなたの目的やライフスタイルに合った選び方もガイドします。
- 初心者はまず「投資信託(インデックスファンド)」から検討するのが王道。
- 大きなリターンを狙うなら「株式」、守りを固めるなら「債券」や「金」。
- NISAやiDeCoという非課税制度を最大限活用する。
- 「長期・積立・分散」を守り、必ず余剰資金で始める。
なぜ今「投資の種類」を知るべきなのか?
そもそも、なぜ私たちは今、銀行預金だけでなく「投資」に目を向ける必要があるのでしょうか。それは、私たちが生きる経済環境が大きく変化しているからです。
例えばバブル期の日本は、銀行にお金を預けておくだけで高い金利がつき、資産は自然と増えていきました。しかし、現在の預金金利は限りなくゼロに近い「超低金利」です。銀行に100万円預けても、1年後に増えるのは数十円〜数百円程度。これでは資産は増えません。
さらに深刻なのがインフレのリスクです。物の値段が上がれば、同じ100万円でも買えるものが少なくなります。つまり、「現金だけで持っておくことは、実質的に資産を目減りさせている」ことになりかねないのです。
だからこそ、お金に働いてもらう「投資」が必要不可欠です。ただし、すべての資産をハイリスクな商品に投じるのは危険です。さまざまな投資の種類を知り、自分の資産を守りながら増やしていくための知識を身につけることが、現代を生き抜くための必須スキルと言えるでしょう。
主要な投資の種類
投資の世界には無数の商品が存在しますが、初心者がまず押さえておくべき主要なものは以下の5つです。まずはそれぞれの特徴を確認しましょう。
| 種類 | リスク | リターン | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 債券 | 低 | 低 | 国や企業にお金を貸して利子を得る |
| 投資信託 | 中 | 中 | プロに運用を任せて分散投資 |
| 不動産 | 中〜高 | 中〜高 | 家賃収入や売却益を狙う |
| 株式投資 | 高 | 高 | 企業の成長に伴う利益を狙う |
| 金(ゴールド) | 中 | 低〜中 | 「有事の金」。守りの資産 |
株式投資(国内株・外国株)
株式投資は、企業が発行する「株式」を購入し、その企業のオーナーの一人になることです。投資の代表格と言えるでしょう。
【メリット】
値上がり益(キャピタルゲイン):買った時より株価が上がれば、大きな利益を得られます。テンバガー(株価が10倍になる株)などの夢もあります。
配当金(インカムゲイン):企業が上げた利益の一部を「配当金」として定期的に受け取れます。
株主優待:日本株特有の制度で、自社製品や割引券などがもらえます(実施していない企業もあります)。
【デメリット】
価格変動が大きい:業績悪化や不祥事などで株価が暴落するリスクがあります。最悪の場合、倒産すれば価値がゼロになる可能性もあります。
初心者にとっては、どの銘柄を選ぶかの判断が難しいため、まずは少額から始めるか、身近な知っている企業から検討するのがおすすめです。
投資信託(インデックスファンド)
投資信託は、多くの投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用のプロ(ファンドマネージャー)が株式や債券などに分散投資する商品です。
【メリット】
少額から分散投資が可能:100円や1000円といった少額から始められ、一つの商品を買うだけで世界中の株や債券に分散投資ができます。
プロにお任せ:個別の銘柄選定をする必要がなく、管理の手間がかかりません。
【デメリット】
手数料(信託報酬)がかかる:プロに任せる分、保有している間はずっと管理費用がかかります。
元本保証ではない:市場全体が暴落すれば、投資信託の価値も下がります。
特に初心者におすすめなのが、日経平均株価やS&P500などの指数に連動する「インデックスファンド」です。手数料が安く、長期的に見れば安定したリターンが期待しやすいため、資産形成の王道とされています。
債券(国債・社債)
債券とは、国や地方自治体、企業などが資金を借りるために発行する「借用証書」のようなものです。投資家はこれらを購入し、満期まで保有することで利子を受け取り、満期には元本が返ってきます。
【メリット】
安全性が高い:満期まで持てば元本が戻ってくる確度が高く(発行体の破綻がない限り)、定期的に利子がもらえます。特に「個人向け国債」は元本割れしない仕組みがあり、非常に安全です。
【デメリット・リスク】
リターンが低い:株式などに比べると、得られる利益(利子)は低めです。大きく増やすのには向きません。
「減らしたくないお金」の置き場所として、銀行預金よりは良い選択肢となります。
不動産投資(REIT、不動産小口化商品含む解説)
不動産投資は、アパートやマンションなどを購入し、人に貸して「家賃収入」を得たり、売却して利益を得たりする方法です。
【メリット】
安定した収入:入居者がいれば毎月決まった家賃が入るため、不労所得として魅力的です。
インフレに強い:物の値段が上がると、不動産価格や家賃も上がりやすい傾向があります。
【デメリット・リスク】
初期費用が高額:現物不動産を買うには数百万円〜数千万円の資金やローンが必要です。
空室リスク:入居者が決まらないと収入がゼロになります。
「いきなりマンションを買うのは無理」という方には、REIT(リート:不動産投資信託)がおすすめです。投資家からお金を集めて複数の不動産を運用する仕組みで、数万円程度から「不動産オーナー」のような配当を受け取れます。
金(ゴールド)投資
金(ゴールド)そのものに投資する方法です。「有事の金」と言われるように、戦争や恐慌などで世界情勢が不安になると価格が上がる傾向があります。
【メリット】
実物資産としての価値:株式や紙幣のように紙切れ(無価値)になることがありません。世界共通の資産です。
【デメリット・リスク】
利息を生まない:金自体は働かないため、配当金や利子は一切つきません。あくまで「守りの資産」として、ポートフォリオの一部(5〜10%程度)に組み込むのが一般的です。
【目的・タイプ別】あなたに本当に合う投資の選び方
主要な投資の種類を理解したところで、次は「自分はどれを選べばいいのか」を考えましょう。投資に正解はなく、目的や資金力、性格によって最適な選択肢は異なります。
ここでは、よくある4つのケース別に最適な投資スタイルを提案します。
ケース①:少額からお試しで始めてみたい
「損をするのが怖い」「まずは練習したい」という慎重派のあなた。
おすすめの投資種類
ポイント投資:現金を使わずに投資信託や株を買うことができます。
スマホ証券での少額投資:1株数百円から株が買えるサービス(単元未満株)を利用して購入できます。
これらは投資の感覚を掴むのに最適です。まずは口座を開設し、ポイントで運用を始めてみましょう。
ケース②:老後資金など、将来のために長期でコツコツ貯めたい
20年〜30年先の老後に向けて、着実に資産を増やしたいあなた。
おすすめの投資種類
投資信託:全世界株式や米国株式(S&P500)などに連動するファンド。
このタイプの方は、「つみたて投資」が最強の武器になります。毎月一定額(例:3万円)を自動引き落としで買い続けることで、高い時も安い時も淡々と購入でき、長期的には資産が大きく育つ可能性が高いです。
ケース③:数年後(5〜10年後)に使う教育資金や車購入費を準備したい
使う時期が決まっているお金の場合、直前の暴落で資産が大きく減る事態は避けなければなりません。
おすすめの投資種類
バランス型投資信託:株式だけでなく、債券なども含んだ値動きがマイルドな商品。
個人向け国債:元本割れのリスクを避けつつ、銀行より高い金利を得る。
リスクを取りすぎず、かつ預金よりは増やしたいというバランス感覚が重要になります。株式100%などの攻めた運用は避け、債券を組み合わせて守りを固めましょう。
ケース④:ある程度まとまった資金で、積極的に利益を狙いたい
余剰資金が十分にあり、勉強意欲も高く、市場平均以上のリターンを狙いたいあなた。
おすすめの投資種類
個別株式(日本株・米国株): 成長企業を見極めて投資。
REIT(不動産投資信託): 高い分配金利回りを狙う。
ご自身で決算書を読んだり、ニュースをチェックしたりする手間はかかりますが、読みが当たった時のリターンは大きいです。ただし、リスク管理のために、資産のコアとなる部分は投資信託で守りつつ、攻めの部分で個別株を楽しむといった「コア・サテライト戦略」を推奨します。
待って!NISAやiDeCoは「投資の種類」ではない?
投資を勉強していると必ず耳にする「NISA」や「iDeCo」。これらを「株式や投資信託と並ぶ投資の種類」だと思っていませんか?
実はこれらは投資の商品名ではなく、投資を有利にするための税制優遇制度のことです。
NISA・iDeCoは「投資を有利にするための制度」
通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかります。10万円利益が出たら、手元に残るのは8万円です。しかし、NISAやiDeCoで投資をすると、非課税になります。
重要なのは制度の中で、どの商品を買うか
NISAを始めるにあたって重要なのは、「その箱の中に、どの投資の種類を入れるか」です。
- NISAの箱に「投資信託」を入れる
- NISAの箱に「株式」を入れる
このように考えます。
これから投資を始めるなら、まずは「NISA口座を開設」し、その中で先ほど紹介した投資信託などを購入するのが、最も合理的でお得なスタートと言えます。
投資初心者が種類を選ぶ前に知っておくべき「3つの心構え」
どの投資の種類を選ぶにしても、失敗しないために絶対に守ってほしい「3つの鉄則」があります。これを知らずに始めると、相場の変動に耐えられず、短期で退場してしまうことになりかねません。
① 生活防衛資金の確保
投資はあくまで余ったお金で行うのが大原則です。生活費や、近い将来(数年以内)に使う予定のあるお金まで投資に回してはいけません。
まずは、「生活防衛資金(生活費の3ヶ月〜半年分)」を銀行預金として確保しましょう。これがあることで、万が一暴落が起きても「生活には困らないから大丈夫」と、冷静に投資を続けることができます。心の余裕こそが、投資成功の鍵です。
②「長期・積立・分散」が基本
投資の王道は以下の3セットです。
- 長期:数ヶ月で結果を求めず、10年、20年と長く持ち続ける。時間を味方につけることで、複利効果(利子が利子を生む)が最大化します。
- 積立:毎月決まった額をコツコツ買う。購入時期の分散になり、高値掴みを防げます。
- 分散:1つの銘柄や資産に集中させず、世界中の株や債券に分ける。「卵を一つのカゴに盛るな」という格言通り、リスクを抑える効果があります。
③ 最終的には自己責任
厳しいようですが、投資に絶対はありません。銀行員や証券会社の窓口でおすすめされた商品が、必ず儲かるわけでもありません。
「誰かが言ったから」ではなく、「自分がこの投資の種類や商品のリスクを理解し、納得した上で買う」ことが大切です。わからなければ、わかるまで調べるか、わかるものだけに投資しましょう。
まずは自分の目的を明確にして、小さな一歩を踏み出そう
本記事では、主要な投資の種類とその特徴、選び方について解説しました。投資には「株式」「投資信託」「債券」「不動産」「金」など多くの種類がありますが、万人に共通する「絶対の正解」はありません。大切なのは、何のために、いつまでに、どれくらい増やしたいのかというあなたの目的と、取れるリスクのバランスです。
投資は「習うより慣れろ」の側面もあります。まずは月々数千円やポイント投資などの「少額」からスタートし、値動きに慣れながら、自分に合った投資スタイルを確立していってください。
